平成31年

平成31年3月福岡支部歌会

3月10日(日)、いつものアクロス福岡でコスモス福岡支部歌会があった。選者は藤野早苗、大野英子、司会者は前半大西晶子、後半有川知津子。参加者は17名。最高得点歌は末廣芳子の

〇さらさらと音ともなひてふる里の寺町小路に雪の降る夢

調べがよくて魅力あふれる叙情の歌。「ともなひてふる・・・降る」の響きが印象に残る。一般的には夢とすればなんでも歌になるので、夢の歌は詠むべきではないという意見があるが、この歌は夢と言い切ったことで幻想的な歌になった。一方で、さらさらというオノマトペは、音の表現として工夫が足りない。オノマトペで始まる歌は弱くなるので、もう一段の工夫が必要という意見も出た。

そのほか、いくつかの歌を上げる。

〇おほふねの暖かき冬にゆるびつつ南太平洋ツバルをしらぶ

枕詞おおふねのは「ゆた」または「ゆくらゆくら」などにかかるので、ゆるぶにかけようとしているが、あいだに暖かき冬が入っているので暖かきの枕詞のようにとられてしまう。最近の枕詞の使い方で少し間をおいてかける使い方はあるが、間のとり方が長いのはまずい。この歌は、上句がのんびりしすぎているために、下句の温暖化によって島が沈むという深刻な問題が他人事としてうたわれており、緊迫感がない。

〇メガネ、マスク、帽は目深にほんものの逃亡者もゐる三月の街

花粉症の人が防御のためにマスク等をする姿を逃亡者がいるかもしれないととらえた面白い歌。ほんものの逃亡者とまで言う必要はなく、三句以下は「逃亡者もまぢりゐるらん三月の街」としたほうがよい。

〇目の術語まはりの物みな輝けど吾が顔無残あかんべえする

三人の評者は白内障の手術後として評をした。しかし、老人が多い仲間内なので目の手術だけで白内障ととったのであって、そのことが明示されているわけではない。若い人には通じない。白内障手術であることを歌の中に入れる必要がある。例えば上句を「ものなべて輝く白内障術後」。

〇お多福のかほが描かれた固焼きのせんぺい食めば外は催花雨

よくできた歌だが、なになにすればの確定条件に「落とし込み」をする詠み方は、従来からよく使われて陳腐化しつつある。「・・・せんぺい食べる外は催花雨」とするほうが新しい詠み方になる。なお、ここで詠まれたせんぺいは櫛田神社で節分の時に売られるものだということ。

平成31年2月福岡支部歌会

詠草提出者は20名、欠席者が二人いたので18名で開催。場所はいつもの通り「アクロス福岡」二階のセミナー室。司会は大西晶子、コスモス選者藤野早苗、大野英子の二人が、参加者三名の評のあとにすべての作品の評をした。
最高得点歌は、12名が票を入れた栗山由利の
ベ ラ ン ダ に 寝 こ ろ ん で 見 る 青 空 に 猫 の 目 線 で 雀 を さ が す
だった。わかりやすく明かるい歌で、最近では珍しく多数の評を得たが、秀歌とするためにはもう一段の努力が必要という厳しい意見もあった。
そのほかの歌で印象に残った歌と意見をいくつか取り上げる。まず、
心 臓 に 金 属 の 弁 、 右 腕 に 鉄 板 入 り て 母 サ イ ボ ー グ
作者の気持ちは、母親がサイボーグのように不死身でいてほしいという願いを込めているのだろうが、母親をサイボーグと表現することには違和感がある。「母は不死身・・」とするか、「鉄板入りても母はサイボーグでなし」などとすべきではないか。また、金属の弁や鉄板を医学的な用語で表現できれば、サイボーグも生きるかもしれないのでより工夫をしてほしいとの意見があった。
ま ば ら な る 人 と あ ふ る る 光 の せ 〝 暗 闇 〟 行 き の 終 電 車 ゆ く
文章を強調する時や他の文章から引用する時に使うダブルミニュートで暗闇をくくるのは、思わせぶりになって奈落などの様々な想像をさせてしまう。「暗闇の中」ぐらいに抑えたほうが作者の意図が伝わるのではないか。さらに、ダブルミュートプラス暗闇で何を表現したかったのかを突き詰めて考えれば、別の言葉が生まれるかもしれないのでさらに推敲してほしいという意見があった。
み た り 子 に 遺 し お く も の 何 や あ る 野 川 に映る 冬 の ゆ ふ ば え
出来ている歌だが、類型化された、方程式どうりの歌になっているので感動が伝わらない。下句が景として作用させているのか、実際に子供に残したいものなのかわからず、読者に判断が任されている。作者が何を伝えたいか詰めきっていないのでさらに推敲すべき歌。
41 年 か け 太 陽 圏 を 抜 け 出 で し ボ イ ジ ャ ー と て も 郷 愁 あ ら む
ボイジャーは1号と2号があり、太陽圏を抜け出した時点が違う。科学的な知識を用いる場合は突っ込まれないように歌うべきだ。機械のような無機物を擬人化させることに違和感を感じるという意見とともに、宇宙をさまようような場合は許されるのではという意見があった。
そのほかにも、様々な質問、意見交換があり、13時から17時まで充実した時間をすごした。その後、17名が参加して梅の花で新年会があり、こちらも大いに盛り上がった。
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