福岡支部の歌会 

福岡支部の歌会

原則として、毎月第2日曜日の13時から17時まで開催します。
参加者は、前月の25日までに詠草集担当の栗山由利に、郵送またはメールで一首を送ります。
詠草集担当者は、無記名の詠草集、記名の詠草集を作成し、無記名の詠草集は、郵送またはメールで参加者に送られます。
参加者は、予め詠草を読み込み、それぞれの歌評を準備するとともに、優れた歌を3首から4首選びます。
当日参加者は、選んだ歌を司会者に提出し、司会者は取りまとめの上、歌会の冒頭に選歌結果を発表し、最高得点歌を決定します。
最高得点が同数の場合は、歌会が終わってから、作者名を発表する前に挙手で最高得点歌を決定します。
詠草集の順番にしたがって、司会者がその歌を選んだ参加者と、選ばなかった参加者に歌評を求め、その後コスモス短歌会の選者である藤野早苗と、大野英子がそれぞれ歌評を行います。
すべての歌評が終わると、作者名が発表されます。
その後、時間があれば質疑応答となり、意見が出尽くしたところで歌会が終了します。
詠草担当者は、参加者と最高得点歌をコスモス本部に報告し、その内容が後日コスモスに掲載されます。
見学希望者は支部長大西晶子に事前にご連絡ください。

2019年5月11日歌会報告

 開催日時は511()13時から17時。会場はJR博多シティ9階会議室4、参加者は30名。山口、北九州、佐賀、長崎、大分、熊本支部からも参加があった。

福岡支部の仲間の平川和子さんが急逝されたので、黙祷をささげて歌会を開始。出前講師は大松達知氏。司会は大野英子と、有川知津子。詠草ごとに参加者一人が選評をした後、大松氏がすべての詠草について評を行った。

大松氏が選んだ最高得点歌は、山口支部鈴木知登世さんの歌。

〇物干しにわかめ干されて海匂ふ浜の昼盛り たんぽぽと猫

  大松氏は冒頭に、短歌は「説明」ではなく「描写」をしなくてはならない。それはドラマの脚本を書くようなもので、自分が地球上にひとりしかいないことを示すものだと言われていた。この歌は、たんぽぽと猫でドラマが立ち上がるところが良い。物干しと干すが重なるので竹竿にぐらいにした方が良いだろう。

 次点は二首。まず、長崎の福盛静夫さんの歌

 〇かみさんをお前と呼びしことはなし無念なりけり六十年を

  「無念なりけり」と思い切った表現にしたことで、ドラマチックになった。

 次は、福岡支部池田毅の歌。

 〇売上は未だゼロなりゼロなれど三月あたま気張れ気張れ俺

  リズムがあって勢いのある歌。売上ゼロが良くわからないところもあるが、歌として面白い。

 大松氏の多くのアドバイスの中から印象深かったいくつかを紹介する。

〇車屋の油のにじむ太き手にバネ一つもち話の弾む

一首のなかで山は一つ。詰め込み過ぎてはいけない。この歌の場合「話の弾む」は蛇足。

〇肌へより沁みて渇けるこころにも届くかに春のコスメ数滴

まだ何々していないという表現は避け、きちんと動作が完了している表現にすべき。「届くかに」は「届く」とすべき。「渇けるこころ」もありきたりなので全体を動かすことになる。

 〇行儀よくカステラ食べたる若きらに社会の風の穏しくあれよ

短歌は少し毒があった方が良い。善人の歌より悪人の歌。「社会の風の穏しくあれよ」は「社会の風よ厳しく吹けよ」の方が良い。

〇すんすんと縄跳びをするをとこをり春ゆふぐれの外灯の下

歌はリズム7から8割、意味は半分。岡井隆は、「なるべく意味がない歌が良い」と言った。」意味を極限まで落として表現することが大事。「すんすんと」は意味がないがリズムを整えている。

その他にも短歌で短歌を詠むことについて詠うのは、短歌を詠まない人にとっては分からない歌となるからやめるべきなど多くの示唆に富む指摘があったが、長くなるので省略する。歌会の後、吉川宏志の『石蓮花』と飯田彩乃『リヴァーサイド』それぞれから10首づつ引用。一部を穴埋めにして解説をされた。一月に一冊づつ歌集を読めば歌が上手くなるとのこと。

  終了後、場所を移して懇親会。大いに盛り上がりを見せた。

4月の歌会報告

4月14日(日)、いつものアクロス福岡セミナー室で開催。詠草を出していた6人が欠席のため13人の会となった。選者は藤野早苗、司会は大西晶子、最高得点歌は栗山由利。

〇Uターンしてきた冬の不意打ちに首をすくめる桜とわたし

冬を詠っているのに、節調が良く明るい歌になっている。真冬に戻ったような寒の戻りは、温かかった春にまさに不意打ちであり、その様子が分かった上に面白くできている。

その他数首を揚げる。

〇春の夜の雨はつれなし磨きたるばかりの窓をぴしぴしと打つ

凡河内躬恒の「春の夜の闇はあやなし梅の花色こそ見えね香やは隠るる」の本歌取りと思われる歌。本歌取りは、本歌をにおわせながらその世界を大きく膨らませることができるときには有効だが、難しくなかなか成功しない。この歌は、言葉から先に歌を作っている感じがするので、自分が感じたことをそのまま詠むべき。

〇エアフォースワン飛びゆけり二月尽半島に向く街に霾る

具体性がなく、読みのコードが分からない歌。90%の人に分かってもらう歌を作るか、それ以外を狙うかで詠み方が変わる。この歌は、大統領専用機と二月尽でハノイで行われた米朝会談のこと詠み、下句で博多に大陸からの黄砂が降ることを暗示している。この二つで米朝会談が失敗に終わった不安のようなものを詠もうとしている。作者にとっては、この事件を歌として記憶する意味も持っている。若い人たちの作風も意識した挑戦の歌。

〇蒸しタオル顔にあてゐるここち良さ中山さんと過ごす時間は

誰かわからないが中山(NAKAYAMA)さんという言葉の響きも良く、気持ちの良さも伝わるよくできた歌。ただ、テーマ性に乏しく読者に感動を与える深さという点で少し物足りない。

〇白菜も青梗菜も菜の花とたけて畑地に田打ち雨ふる

春の季語「田打ち」を使い季節感が出ている。俳句の季語を取り入れることもこれからの歌の詠み方の一つ。この歌の場合畑地に田打ちはおかしいのでそれを解消する必要がある。たとえば「・・・菜の花とたけたる今日を田打ち雨ふる」。

3月の歌会報告

3月10日(日)、いつものアクロス福岡でコスモス福岡支部歌会があった。選者は藤野早苗、大野英子、司会者は前半大西晶子、後半有川知津子。参加者は17名。最高得点歌は末廣芳子

〇さらさらと音ともなひてふる里の寺町小路に雪の降る夢

調べがよくて魅力あふれる叙情の歌。「ともなひてふる・・・降る」の響きが印象に残る。一般的には夢とすればなんでも歌になるので、夢の歌は詠むべきではないという意見があるが、この歌は夢と言い切ったことで幻想的な歌になった。一方で、さらさらというオノマトペは、音の表現として工夫が足りない。オノマトペで始まる歌は弱くなるので、もう一段の工夫が必要という意見も出た。

そのほか、いくつかの歌を上げる。

〇おほふねの暖かき冬にゆるびつつ南太平洋ツバルをしらぶ

枕詞おおふねのは「ゆた」または「ゆくらゆくら」などにかかるので、ゆるぶにかけようとしているが、あいだに暖かき冬が入っているので暖かきの枕詞のようにとられてしまう。最近の枕詞の使い方で少し間をおいてかける使い方はあるが、間のとり方が長いのはまずい。この歌は、上句がのんびりしすぎているために、下句の温暖化によって島が沈むという深刻な問題が他人事としてうたわれており、緊迫感がない。

〇メガネ、マスク、帽は目深にほんものの逃亡者もゐる三月の街

花粉症の人が防御のためにマスク等をする姿を逃亡者がいるかもしれないととらえた面白い歌。ほんものの逃亡者とまで言う必要はなく、三句以下は「逃亡者もまぢりゐるらん三月の街」としたほうがよい。

〇目の術語まはりの物みな輝けど吾が顔無残あかんべえする

三人の評者は白内障の手術後として評をした。しかし、老人が多い仲間内なので目の手術だけで白内障ととったのであって、そのことが明示されているわけではない。若い人には通じない。白内障手術であることを歌の中に入れる必要がある。例えば上句を「ものなべて輝く白内障術後」。

〇お多福のかほが描かれた固焼きのせんぺい食めば外は催花雨

よくできた歌だが、なになにすればの確定条件に「落とし込み」をする詠み方は、従来からよく使われて陳腐化しつつある。「・・・せんぺい食べる外は催花雨」とするほうが新しい詠み方になる。なお、ここで詠まれたせんぺいは櫛田神社で節分の時に売られるものだということ。

ページのトップへ戻る